光触媒コーティングは怪しい?本当に効くのか追求してみた
昨今の新型コロナウイルスの感染拡大後、商業施設や飲食店など多くの人が利用する施設で「光触媒コーティング」という言葉を見かけるようになりました。実際にはどのような効果があるのでしょうか。今回は、光触媒コーティングに関する噂や科学的根拠、効果や仕組みなどについて解説します。
光触媒コーティングは怪しい?噂に迫る!
光触媒コーティングとは、新型コロナウイルス対策の一環として注目を浴びた施工技術です。メディアでも取り上げられたため、実際の効果について知りたい人は多いのではないでしょうか。
結論から申し上げると「限定的な効果が認められる」となります。では、何に限定されるのでしょうか。
光触媒コーティングの効果が期待できない条件とは
まず、空気感染や飛沫感染対策としての効果はほぼ期待できません。接触感染防止の効果がありますが、手洗い不要となるわけでもありません。効果が半永久的に続くわけでもありません。必要以上に感染対策として有効であると宣伝すれば、景品表示法に違反する「優良誤認」にあたる可能性があります。たとえば、光触媒コーティングを施したマスクをすれば、マスクに付着したウイルスや細菌などが化学的に分解されると説明するのは、誇張表現に該当します。
そのため、消費者庁は光触媒コーティングの効果を必要以上に強調したマスクを販売した会社に対し、そのような表示をしないよう措置命令を出しました。こうした経緯があるため、光触媒コーティングは「怪しい」「誇大広告だ」といった印象をもたれるようになったと考えられています。
科学的根拠がある?光触媒コーティングの効果と仕組み
それでは、光触媒コーティングとはそもそもどのような施工技術なのでしょうか。光触媒の効果が発見されたのは1960年代の日本です。東京大学の本多健一氏と藤島昭氏は酸化チタンに強い光を当てると、水が酸素と水素に分解されることを発見しました。
1970年代に一度研究が停滞しますが、1980年代後半に汚染物質の分解を目標として研究が再開されます。東陶機器基礎研究所と東京大学の共同研究では、酸化チタンで表面を覆ったタイルの効果を手術室などで調べたところ、タイルを貼った床や壁だけではなく、空気中の細菌も減少していることがわかりました。
細菌が減少した理由は、酸化チタンの表面に光があたると、空気中の水分と酸素が反応して活性酸素を発生させたからです。活性酸素の力は非常に強力で、アルコールや植物の葉、シックハウス症候群の原因とされるVOC(揮発性有機化合物)、雑菌、ウイルス、果てはゴキブリすら分解してしまいます。
光触媒コーティングの難点と技術の進歩
このように、酸化チタンを用いた光触媒は強い効果があるとわかりましたが難点がありました。それは、紫外線を必要とするため、屋外など紫外線が強い場所でしか効果を発揮できないことでした。2010年代に入ると新たな技術が開発され、自然光よりもエネルギーが低い室内証明でも使用可能な光触媒が開発されます。
光触媒には活性酸素を発生させるほかに、超親水性という効果があります。紫外線が酸化チタンにあたると、表面が水になじみやすくなります。そして、水が膜のように薄く張り付くようになるのです。この状態を超親水性といいます。超親水性は、建物外壁の防汚効果と密接にかかわります。
これらの効果が認められ、現在では空気清浄機や脱臭機、エアコン、貯水槽の浄化用フィルター、防汚効果を持ったタイルの製造・販売、ガラスなど幅広い分野で光触媒技術が実用化されています。
光触媒コーティングは本当に効果があるの?
ここまで、光触媒の開発の歴史や効果、仕組みについて解説してきました。ここからは、3つの代表的な効果について解説します。
空気を浄化する効果
ひとつ目の効果は空気を浄化する効果です。先ほどの東京大学の実験でもわかるように、大気中の汚染物質を分解する効果があります。道路の防音壁に光触媒コーティングを施すことで、窒素酸化物を除去する実験が進められています。
防汚効果
酸化チタンを各種建築材料の表面に塗布すると、建築材料の表面に付着した汚染物質が光触媒の作用により分解・除去されるため汚れが付くのを防いでくれます。また、建築物の外壁に使用すると、超親水性の効果を発揮します。この状態で外壁に汚れが付着しても、雨水が当たれば汚れが雨と一緒に洗い流されてしまい、外壁が常にきれいな状態で保たれます。
防曇効果
光触媒コーティングが持つ超親水性の効果により、コーティング面に付着した水は固まって水滴になることができません。そのため、ガラス面を曇らせることがありません。
まとめ
光触媒コーティングは大学や企業の研究により効果が証明された施工技術です。新型コロナウイルスに対する効果が過大に取り上げられ、優良誤認と認定されたため、怪しい技術と見られがちですが、実際には抗菌効果やシックハウスの原因物質であるVOCなどを分解する効果がある有用な技術です。光触媒コーティングは科学的根拠のある施工技術で、自信をもって顧客におすすめできるサービスだといえます。